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信越自然環境事務所

報道発表資料

2022年06月17日

令和4年度中央アルプスにおけるライチョウ繁殖個体数及び茶臼山動物園で実施した他園からの卵移植について

 環境省では、中央アルプスにおいてライチョウ個体群復活事業を進めており、令和4年4月末から6月10日までの現地調査の結果、17のなわばりが確認されました(令和3年度は8のなわばり)。
 また、野生復帰を目指して繁殖(2園で最大6家族)を進めている那須どうぶつ王国及び長野市茶臼山動物園のうち、茶臼山動物園に富山市ファミリーパークといしかわ動物園の2園から受精卵計7卵を移送し、茶臼山動物園で飼育している雌が産んだ無精卵5卵と交換しました。これは、茶臼山動物園で繁殖を行っている1つがいの繁殖が遅れていることから、野生復帰候補となっている繁殖つがい数を減らさないために緊急的に行った措置です。
 6月末から中央アルプスではライチョウ家族を捕食者や低温から守り生存率向上を目的としたケージ保護事業(最大6家族)を開始する予定です。

1.中央アルプスにおけるライチョウの繁殖個体数について

▶ 中央アルプスにおける生息個体数の変化

平成30年度 8月 飛来雌1個体を確認
令和2年度 8月

(乗鞍岳から家族移植終了時点)
20個体(移植個体19個体+飛来雌1個体)

令和3年度 6月

少なくとも18個体の生存を確認
なわばり数8(雄8個体雌10個体、一夫二妻なわばり2つ)

 

▶ 令和4年度の繁殖個体数(6月10日時点)

 今年度は4月末から調査を開始し、6月7日から10日にかけて中央アルプス中南部ひのき岳~越百こすも山等)の調査も実施しました。これらの調査により中央アルプス全体で17のなわばりが確認されました。これらのなわばりはまだつがいの片方しか観察できていないなわばりもありますが、少なくとも1つのなわばりは一夫二妻である可能性が確認されています。よって、6月10日時点で35個体のライチョウが繁殖に参加している見込みです。このほか、あぶれ雄とみられる個体1個体、つがい相手が確認できていない雌1個体がいることも観察されているため、まだ確認できていない個体がいる可能性も含めると中央アルプス全体での生息個体数は40個体程度と推定されています。
 昨年度は熊沢岳がなわばりの南端でしたが、今年度は中央アルプスの南部に位置する南駒ヶ岳や赤梛あかなぎ岳周辺までなわばりが観察されました。また、中央アルプス北部でも木曽前岳や三ノ沢岳など昨年度はなわばりが見られなかったエリアでもなわばりが確認されており、確実に生息個体数の増加や生息範囲の拡大が見られています
 これまでの調査は株式会社ヤマップのライチョウモニターに寄せられた情報も参考に調査を実施していますが、今回は環境省の現地調査で確認された個体のみを対象に報告しています。

2.長野市茶臼山動物園(以下、茶臼山動物園)における他園からの卵移植について

▶ 茶臼山動物園における飼育個体数

・令和3年8月3日に中央アルプスから1家族(雌親1個体+雛3個体)を導入。
・令和4年1月19日に那須どうぶつ王国に雄1個体を送り、那須どうぶつ王国から雄2個体を受け入れ。
・雄交換後の飼育個体数は雌3個体雄2個体の計5個体。

▶ 令和4年度の繁殖状況と卵の移植について

 令和3年度ライチョウ保護増殖検討会(以下、「検討会」という。)で決定した内容に従い、茶臼山動物園では3個体飼育している雌のうち雌2個体について雄とつがいを形成し繁殖を開始しました。残りの1個体については予備個体として営巣環境を整えた上で雌単独で生活させていました。
 つがいにさせた2個体のうち1個体については繁殖の進行状況が遅く、6月7日時点で交尾も確認されていませんでした。一方で、雌1個体で飼育していた予備個体は6月5日から既に産卵していたことから、今年度事業では予定されていなかったものの、検討会委員の了承を得た上で他園の個体が産卵している受精卵と予備個体が産んでいる無精卵と交換することとしました
 6月15日に富山市ファミリーパークといしかわ動物園の2園から計7卵(富山3卵、いしかわ4卵)の提供を受け、6月16日午前8時半頃産卵中の予備個体の無精卵5卵と交換を行うことで卵の移植を実施しました。予備個体は16日午後に自身の6卵目の卵を産んだと見込まれているため、現在巣には移植した受精卵7卵と自身が産んだ1卵の計8卵がありますが、6月16日17時現在で抱卵には入っていません。
 なお、那須どうぶつ王国では繁殖を行っている4家族のうち1家族は既に9卵を産み抱卵に入っており、他3個体についても産卵中です(別添参考資料参照)。

3.今後の予定

 中央アルプスでは6月末からケージ保護事業を開始する予定です。また、今回卵を交換した家族及び野生復帰予定家族を飼育している那須どうぶつ王国及び長野市茶臼山動物園の繁殖状況については状況に応じて各園から報道発表を行います。また、動物園から野生復帰させる家族数については、孵化した家族の数や野生復帰事前チェック項目に従って決定していく予定です。

お問い合わせ先

・中央アルプスの状況及びライチョウ保護増殖事業に関すること(環境省側)
 信越自然環境事務所野生生物課 小林(026-231-6573)
・ライチョウの生息域外保全事業及び動物園における野生復帰計画に関すること
 ライチョウ域外保全計画管理者(富山市ファミリーパーク) 秋葉(076-434-1234)

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