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信越自然環境事務所

報道発表資料

2021年12月23日
  • その他

那須どうぶつ王国における野生ライチョウの死亡要因の検証及び再発防止策について

 中央アルプスにおけるライチョウ個体群復活事業の一環で令和3年8月3日に中央アルプスから那須どうぶつ王国に移送した野生ライチョウ家族7羽のうち、雌親1羽が9月13日に死亡した事案(9月15日報道発表)について、死亡要因の検証及び再発防止策を実施しましたので報告いたします。

 

1.死亡の経緯

 令和3年9月13日7時40分頃に飼育室に入室した職員が、衰弱している雌親を発見し、治療を行ったが10時40分に死亡を確認した。飼育室内に設置された2台の監視カメラの映像を確認したところ、9月12日21時40分頃から翌13日2時10分頃にかけて飼育室内においてライチョウ家族が計27回飛び上がったことを確認した。専門家から肉食小型哺乳類の侵入又は接近による影響の可能性が指摘されたため、以下のように検証を行った。

2.死亡要因の検証

 死亡前後の監視カメラの映像を詳細に確認したが、確実な哺乳類の侵入映像は発見できなかった。
 また、死亡個体の検死結果では頸部及び胸部等に打撲によるものと考えられる内出血痕が見られたが、哺乳類による咬傷による外傷痕などは見られなかった。さらに、外部機関に依頼していた病理検査の結果報告でも死因は胸部強打によるものと判断された。
 死亡した個体は一連の飛翔の中で衝突防止ネット越しに勢いよく壁に衝突する様子や、衝突防止ネットが張られていない床に近い壁に衝突した様子が確認できた。これらの衝突の結果、本個体は平衡感覚を喪失した様子が確認され、最終的に起立不可能な状態に陥ったと考えられた。なお、他の飼育施設では、夜間の暗闇の中で他のライチョウが近づいて来たことに驚いて飛び上がり、壁などに衝突するなどして骨折した事例が確認されている。
 一方で、本件のそもそもの要因となっている夜間の断続的な集団的な飛翔は、一部の事例については暗闇の中で他のライチョウの接近に驚いたと思われる事例も確認されたが、要因として断定する十分な証拠が得られておらず、哺乳類の接近等の可能性についても否定できない。
 このため下記3.のとおり、哺乳類の施設への接近を含め様々な可能性を想定して、幅広い再発防止策を実施した。

3.再発防止策について

(1)那須どうぶつ王国での対応

  1. 哺乳類の侵入・接近防止強化
     屋外と接している飼育施設内の窓に1cmメッシュの金網を追加設置し、哺乳類の建屋内へ侵入防止を強化した(10月6日より実施)。なお、従来から施設内の排水口等にも金網を張るなど侵入防止措置が施されており、この点は継続して行っている。
     施設周辺の草刈りを徹底することで野生動物が隠れられる場所を極力少なくする等、野生動物の接近の抑止を強化した(9月28日より実施)。
     周囲に生息する野生の動物がライチョウの飼育施設に接近し、鳴き声などで建物内のライチョウに影響を与えないようにセンサーライト3基を施設外壁に設置した(9月13日より実施)。これは動物が近づいた場合にライトが点灯し、驚かすことで施設への接近を抑止するものである。

  2. モニタリング体制強化のための監視カメラの増設
     施設壁面に接近した動物の種類や行動をより正確に確認できるように、センサーカメラを追加で2台設置し、施設への捕食者の接近についてもモニタリングできるようにした。(9月13日より実施)。

  3. 飼育管理体制の強化
     以下の項目についてさらなる飼育管理体制の強化を実施している。
    ・飼育員の出入りに関する各種ドア等の閉め忘れのチェックの徹底。
    ・飼育室の構造物の破損や故障に関する定期的な点検。
    ・カメラ映像による定期的なモニタリング。
    ・定期的な打合せ等による飼育員同士の安全管理上の情報共有。

  4. 飼育室内における壁際ネットの構造改良
     ライチョウが勢いよく飛び上がってしまった場合に壁への衝突を防止するため、ネットの張りを強くした。また、ネットの編み目サイズも4mmメッシュと小さく変更することで飛び上がった際にライチョウがネットに引っかかるリスクも軽減した(9月27日より実施)。さらに壁への衝突リスクを軽減するため、壁側面から数十センチ離した飼育室内全体をかご状のネットで覆った部屋への馴致を12月5日から開始し、12月17日からは寝室としての利用を開始した。なお、寝室を移動してからは夜間の飛び上がりは観察されていない。
     また、飼育室の照明を調節することで、夜中でも飼育室内がうっすらと周囲を確認できるようにし、暗闇でライチョウ同士が接近又は接触して驚いて飛び上がるリスクの軽減を試みた。(10月21日より実施)

(2)日本動物園水族館協会の対応

 事故発生後他のライチョウ飼育施設に事故の発生について周知し、施設への哺乳類の侵入経路がないか等施設チェックを依頼した。また、今年度末を目処に改定を進めているライチョウ飼育管理ルールブックにおいて、飼育施設の窓などに設置する金網の編み目サイズを規定する文言や複数個体で飼育する際の壁面等への衝突事故に対する対処事例を追記する等対策を強化する予定となっている。

4.次年度の事業について

 今年度中に開催される令和3年度ライチョウ保護増殖検討会にて専門家等の意見を踏まえ決定する。

■ 問い合わせ先
今年度のライチョウ保護増殖事業全般について
 環境省信越自然環境事務所 野生生物課 生息地保護連携専門官 小林 篤
 TEL:026-231-6573 E-mail: ATSUSHI_KOBAYASHI@env.go.jp

那須どうぶつ王国における取組について
 那須どうぶつ王国 広報担当 宮地 さくら
 TEL:0287-77-1110 携帯:090-8870-3508 E-mail: miyachi@nasu-oukoku.com
 URL https://www.nasu-oukoku.com

(公社)日本動物園水族館協会における取組について
 日本動物園水族館協会 ライチョウ計画管理者(富山市ファミリーパーク) 秋葉 由紀
 TEL:076-434-1234 E-mail: info2020@toyama-familypark.jp