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信越自然環境事務所

報道発表資料

2021年04月16日
  • その他

令和3年度ライチョウ保護増殖事業(生息域内保全事業)の実施について

環境省では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき、文部科学省・農林水産省と共同で策定した「ライチョウ保護増殖事業計画」(平成 24 年1月)を踏まえ、「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画」(令和2年4月)を作成し、ライチョウの保護増殖事業を進めています。令和 3 年度 に 実施予定の 中央アルプスにおける個体群復活事業をはじめとする生息域内保全事業 の 内容 について 、以下のとおりお知らせします。 取材を希望される場合は、 ご一読いただき 下記連絡先までお願いします。

1.中央アルプス国定公園駒ヶ岳周辺における事業

 第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画及び中央アルプスにおけるライチョウ野生復帰実施計画に基づき、環境省レッドリストにおけるダウンリストを念頭に置き、生息地を分散させ地球温暖化等による絶滅リスクを低減させるため、ライチョウが絶滅したとされる山岳における個体群復活試験を実施しています。中央アルプスでは平成30年8月に雌1羽が確認され、令和2年度には個体数の安定している乗鞍岳から3家族19羽が移植されました。令和3年度には、移植した個体の繁殖状況を基に以下の事業を実施します。

(1)中央アルプスにおけるケージ保護事業

 令和2年に移植した個体や平成30年に飛来した個体の生存状況やなわばり位置を確認する調査を行います。個体の生存状況やライチョウがなわばりを構えた位置に応じて、ケージを用いて保護する(以下、「ケージ保護」という。)家族数を決定します。ケージ保護の対象とした家族の雛が孵化した後は家族ごとにケージに収容して7月上旬~8月上旬まで家族を捕食者や低温から守り生存率向上に努めます。併せて、ニホンザルの追い払いや捕食者対策試験を実施し、ケージ保護を実施しなかった家族の生存率向上に向けた事業も実施します。これらの事業は、長野県をはじめとする関係機関や地域住民等と連携を図りながら進めます。また、中央アルプスにおいて広くライチョウの目撃情報を収集するため、中央アルプスロープウェー駅や山小屋に情報収集カード及び情報収集カードを普及啓発するためのポスターを設置します。

(2)日本動物園水族館協会加盟動物園への野生家族の導入

 中央アルプスで繁殖したライチョウの個体数及びケージ保護した家族数に応じて、中央アルプスで繁殖した個体の一部を動物園へ導入する事業を実施します。これは生息域外となる動物園において安定した繁殖を図り、再び中央アルプスに戻すことで個体群復活に寄与することを想定した計画です。これまでライチョウでは卵によって野生環境から飼育下へ個体を導入していましたが、最新の研究成果から野生個体が孵化後に獲得する腸内細菌叢やアイメリア原虫(コクシジウム症の原因とされており、産業動物や動物園の飼育では甚大な被害をもたらす原虫類)への耐性が野生環境での成育に必要であることが明らかになったことから、飼育下導入個体を再び中央アルプスに戻すことを念頭においた本事業においては、家族での飼育下導入を実施することとしました。日本動物園水族館協会との協議の結果、那須どうぶつ王国(栃木県)と長野市立茶臼山動物園(長野県)が受け入れ候補となっており、導入家族数は各園1家族、最大2家族を予定しています。家族を移送できると判断した場合は、8月上旬ヘリコプター及び自動車を用いて移送を実施します。

2.妙高戸隠連山国立公園火打山(ひうちやま)周辺における事業

 ライチョウを取り巻く高山の環境を保全することを目的として、環境省及び新潟県妙高市では、妙高戸隠連山国立公園の火打山地区において、平成28年度より生息の阻害要因であると考えられるイネ科植物の除去等の作業を実施しています。令和3年度は、令和2年度に実施した山頂直下及びライチョウ平試験区2箇所(50m×50m)において継続してイネ科植物の除去及び伸長したミヤマハンノキの試験伐採作業を8月下旬に実施します。ライチョウ平試験区においては令和3年度のイネ科生育状況に応じて新たな試験区の設置も検討します。イネ科植物除去事業と並行して、試験区画内の植物開花状況やコケモモ等の矮性低木の結実状況、ライチョウの利用状況等を調査します。

3.南アルプス国立公園北岳周辺における事業

 ライチョウの個体数の減少が著しかった南アルプス国立公園北岳周辺において、平成27年度から令和元年度までケージ保護を実施し、その結果、ケージ保護を開始した平成27年度から個体数が約3.5倍まで増加しました。一定の個体数が回復したため、令和3年度は生息状況のモニタリングと、平成29年度からケージ保護と共に実施してきた捕食者対策を北岳山荘及び北岳肩ノ小屋周辺において継続実施します。また、北岳周辺で巣立った雛の確認調査を赤石岳・荒川岳周辺においても実施します。

【今年度事業の取材について】

◎上記1.については現地取材に制限があります。事前調査及びケージ保護の結果については定期的に信越自然環境事務所より情報提供を行いますが、現地にて取材を希望する場合は別途ご相談ください。中央アルプスから動物園への家族の移送時における現地取材の受入れを検討しておりますが、多くの要因から移送予定日(8月上旬)が近づいた頃に再度ご連絡いたします。

◎上記2.については取材が可能です。

◎上記3.については非公開とします。

※上記各事業は、現時点での予定であり新型コロナウイルス感染症、山小屋及び気象条件等の状況により事業内容に変更が生じる場合があります。

※取材を希望される方は、事前に社名、代表者氏名、取材名簿、取材方法(写真、カメラ等の機材状況)、連絡先(電話、FAX、E-mail)を下記までご連絡の上、あらかじめ日程の調整をお願いします。なお、天候や現地の状況によっては直前に変更をお願いする場合がありますのであらかじめご承知おき願います。

【連絡先】
 ○中央アルプス国定公園及び妙高戸隠連山国立公園での事業(主に上記1.2)について
  信越自然環境事務所 野生生物課
   生息地保護連携専門官  小林 篤
  TEL:026-231-6573  FAX:026-235-1226  E-Mail : ATSUSHI_KOBAYASHI@env.go.jp
 (〒380-0846 長野市旭町 1108 長野第一合同庁舎 3 階)
 ○南アルプス国立公園での事業 (主に上記3)について
  南アルプス自然保護官事務所
   自然保護官  雨宮 俊
  TEL:055-280-6055  FAX:055-280-6056  E-Mail:SYUN_AMEMIYA@env.go.jp

添付資料

ライチョウが生息する主な山岳(事業実施場所参照用)

ライチョウ観察情報収集カード(左:表面、右:裏面)

観察情報収集カード普及啓発用ポスター

■ 問い合わせ先
環境省 信越自然環境事務所(直通:026-231-6573)
所長:堀内 洋
野生生物課長:有山 義昭
生息地保護連携専官:小林 篤