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信越自然環境事務所

報道発表資料

2020年09月04日
  • その他

中部山岳国立公園上高地における小梨平キャンプ場の一部利用再開について

 中部山岳国立公園上高地の小梨平キャンプ場において、8月8日(土)、クマによる人身事故が発生しましたが、8月13日(木)早朝、被害を発生させたと推測されるクマが捕獲されました。

 その後、現場及びその周辺において、餌付いていると思われるクマが1週間以上目撃されていないことに加え、現状必要なクマ対策がとられていることを確認したため、令和2年9月7日より小梨平キャンプ場の一部利用を再開いたします。なお、小梨平キャンプ場等の上高地におけるクマ対策は以下のとおりです。

0.事故の要因

 今回の事故は、様々な要因が複合的に絡んだ結果、発生したものと推察されます。それらを踏まえ、以下1~3までの対策を実施しました。また、今後引き続き検討が必要な対策として4をまとめました。

1.クマの餌付き対策(小梨平キャンプ場に限らず、上高地内の施設を含む)

 人の食べ物の味を一度でも覚え餌付いてしまうことで、再びその食べ物を手に入れようと人の利用エリアに出没することになり、個体によっては徐々に人への警戒がなくなり、人身事故につながる可能性が高くなります。このことを踏まえ、以下を実施。

<上高地内のゴミ箱等への対応>

  • 旅館、ホテルなど施設のゴミ管理:屋内保管などの管理を徹底。
  • 小梨平キャンプ場のゴミ箱:屋外のゴミ箱をクマ対策用に改修中(改修完了まで、ゴミ箱はキャンプ受付前のものだけを供用するうえ、夜間は建物内に保管する)。

<グリストラップの補強の徹底>

 今回、グリストラップに誘引された事例が多かったことから、上高地周辺の旅館やホテルなど各施設に対してグリストラップの補強対応を要請し、補強完了。
※グリストラップとは、厨房排水に含まれる油脂分や残飯、野菜くずなど分離・収集し、下水等への流出を防ぐ装置。

<キャンプ場利用者への指導の徹底>

 キャンプ場利用者に対して、管理者よりゴミ管理徹底を周知。また、今後、小梨平キャンプ場の利用者に対して、上高地ビジターセンターでの事前レクチャーの受講をお願いする(キャンプ場利用者以外も受講可能とするよう調整中)。

2.クマ出没情報の発信・出没時の対応マナーの啓発

<上高地利用者への周知>

 これまで実施してきた上高地インフォメーションセンター等でのクマ注意情報の発信を継続。さらに、他の施設での発信についても調整中
 また、クマ対応のマナー啓発ポスターを引き続き設置。

<巡視対応>

 これまで実施していた環境省職員、施設関係者による上高地内の巡視を継続。また、利用者によるクマの写真撮影など、事故を誘発する可能性がある行為の抑止等も合わせて行うことで、事故を未然に防止。なお、今後は巡視の強化について検討。

3.野営場管理体制の強化

<見通し改善>

 必要最小限の範囲(野営箇所から1m確保できる程度)で近接するササの刈り払いを実施し、クマが隠れにくい環境を整備。これによりクマと人の急な遭遇を防止するとともに、遠くからクマが人を視認できるようにすることで、人の利用エリアへの出没率を低減。
※今後は、野営場に限らず、歩道沿いなど利用施設周辺のササ刈りも関係者と調整しながら実施する予定。

<調理方法の規制>

 特に匂いの強いBBQについては、場所と時間を規制。今シーズンは、テントサイトでのBBQを禁止。
※後片付けは利用者に徹底するとともに、キャンプ場管理者も使用後の見回りを実施。

<事前予約制度の導入>

 当日もクマが隠れやすいササ藪から離れるようキャンプ利用者に案内していたものの、人数上限がなかったため徹底しきれなかったことが一連の襲撃要因のひとつと推定される。そのため、繁忙期には事前予約制度を導入し、利用者数のコントロールを図る。

<食料管理>

 小梨平キャンプ場においては、食料は建物内管理とする。これまで、小梨平キャンプ場では食料はテント内保管とするよう利用者に指導していたが、今回の事故を受け保管方法を変更する。その他の野営場については、実現性も含めて検討。

<小梨平キャンプ場運営基準の見直し>

 小梨平キャンプ場についてはキャンプ場内で餌付いた個体が発生次第、閉鎖とする。

4.その他 現在調整中あるいは今後検討していくこと

<ツキノワグマ対応マニュアルの整理>

 これまでの対応基準としていた「ツキノワグマ出没レベル別危機管理対応表」について、今回の事故を踏まえ、未然防止策や事故発生時の対応等を追加し、ツキノワグマ対応マニュアルとして整理し上高地の関係者に共有する。今シーズンの結果を踏まえ、必要に応じて見直す。

<専門家を招いた地域向け講習会の実施>

 ツキノワグマの生態や上高地利用における注意点について専門家による講習会を実施する。
 ※環境省職員による地域向け臨時説明会は8月21日(金)に実施済み。

<施設の閉鎖判断基準や閉鎖範囲等の明確化の検討>

 事前に閉鎖基準や閉鎖範囲、閉鎖時の宿泊代替措置を明確化しておくことで、より安全性が高まると考えられることから、実現性も含めて検討する。なお、小梨平キャンプ場についてはキャンプ場内で餌付いた個体が発生次第、閉鎖とする。

(参考)これまでの経緯 ※一部、事実関係について追記、修正しました。

 7月20日
小梨平キャンプ場をオープン(コロナ禍や長雨、土砂災害の影響で、例年4月末のオープンから約3ヶ月の遅れ)
 7月27日未明
小梨平ケビンの利用者による不始末のゴミが漁られる。
小梨平キャンプ場にワナ設置。
 8月1日
五千尺ホテル上高地従業員寮(小梨平キャンプ場から直線距離約350mの位置)での目撃情報を元に、ホテル従業員寮付近にワナ設置。
 8月4日AM
ザ・パークロッジ上高地(小梨平キャンプ場から直線距離約400mの位置)での目撃情報を元に、五千尺ホテル上高地従業員寮のワナをザ・パークロッジ上高地に移動。
     23時
ザ・パークロッジ上高地のワナにクマがかかる(今回の人身事故とは別個体と推定。)。翌日、個体は麻酔捕獲し、奥山放獣。この日以降、五千尺ホテル上高地及びザ・パークロッジ上高地でのクマ目撃情報はなし(8/11 9:30時点)。
 8月6日
上高地温泉ホテル従業員寮での目撃情報を元に、上高地温泉ホテル従業員寮付近にワナ設置。
徳沢ロッジ(小梨平キャンプ場から直線距離約5km)周辺での目撃情報を元に、徳沢ロッジにワナ設置。
     19時頃
徳沢ロッジのワナにクマがかかる。翌日、個体は麻酔捕獲し、奥山放獣。
他にも個体がいる可能性があるため、継続してワナ設置。この日以降、徳沢地区でのクマの目撃情報はなし(8/11 9:30時点)。
 8月8日1時頃
小梨平キャンプ場Dサイトにクマが出没し、有人のテント内の食料が漁られたが、人身被害はなく、人を見たら逃げ出す状況だったため、専門家と相談の上、人身被害の発生可能性は低いと判断し、キャンプ場内の管理体制を強化(専門家もキャンプ場に待機)の上、キャンプ場利用は継続。
 8月8日朝
8日未明の小梨平キャンプ場におけるテント漁りを受け、五千尺ロッジに設置したワナを小梨平キャンプ場CサイトとDサイトの間に移動。ワナに近いC及びDサイトを封鎖。利用者に対し、クマが出没しているので、なるべくササ藪から離れてテントを設営するよう周知。(当日未明の事故には言及せず)
 8月8日夜~
9日未明までの間、Bサイトのテント内にいた人がクマにテントごと引きずられたうえ移動先でテントを破られ、爪で引っかかれて負傷する人身被害1件(8月8日23:30発生)、テント被害はE→F→B→Iサイトの順に合計4件(すべて有人)、Iサイトのタープ被害1件が発生。これらの襲撃事案を受け、9日朝、小梨平キャンプ場は閉鎖することとし、9日日没までにテントは全て撤収。
 8月10日
小梨平キャンプ場にクマが出没したが、ワナがうまく作動せず。専門家による再設置が完了。誘引できていると想定し、捕獲作業を継続。
 8月11日夜
ザ・パークロッジ上高地の屋外業務用冷蔵庫が漁られる。近くの倉庫(食べ物なし)の扉も壊される。詳細の時間は不明。
 8月12日
ザ・パークロッジ上高地での目撃情報を元に、ワナを設置。
 8月13日
ザ・パークロッジ上高地に出没したクマに麻酔投与を実施するも一時逃走。その後、死亡確認。

※7月27日に発見されて8月4日捕獲されたクマは同一個体と推定(クマA)。

※8月8日以降、連続的に確認されたクマ(クマB)は8月13日に捕獲されたクマと同一個体と推定。なお大きさなどの特徴からクマAとは別個体と推定。

※今回確認されているクマはツキノワグマ。

小梨平キャンプ場見取り図

■ 問い合わせ先
環境省 中部山岳国立公園管理事務所
所長:森川 政人
上高地管理官事務所 (直通:0263-95-2032)
国立公園管理官:大嶋 達也
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