ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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長野

76件の記事があります。

2007年11月19日しばれはじめの栂池

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

 今年度最後となる栂池のモニタリング調査に行ってきました。
まだ雪は積もっていませんでしたが、自然園はすでに閉園しており、ゴンドラもロープウェイも営業は終了していました。
ビジターセンターや山荘は冬囲いを終え、誰もいない園内は寂しさと静寂に満ちあふれ、ありすぎる開放感を味わいながらの調査・巡視となりました。
※11月16日現在、園内は積雪しています。


(つがのもりのミズバショウ越冬隊)
なんと、新芽らしき物が沢山出ていました。
このまま冬を越すのでしょうか?すごい生命力です。


(左:展望湿原からの白馬連峰 右:展望湿原休憩所)
いつもは多くのカメラマンで賑わう場所です。


(完全に紅葉は終わり冬を待つ)
手前から浮島湿原・ワタスゲ湿原・水ばしょう湿原・ビジターセンター。

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2007年11月05日もうすぐ立冬

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

 いつの間にか暑かった夏も終わり、多くの観光客や登山客で賑わった八方尾根も、気がつけばリフトのグリーンシーズンが11月4日で終了してしまいました。次のウィンターシーズンが開始されるまでは、この尾根もしばしの休憩が出来ることでしょう。
さて今回は10月最後の日に登山者カウンターの撤去と言うことで、巡視もかねて無雪期最後の八方尾根に行ってきました。八方池周辺の気温は晴れていたせいか12℃もありましたが、さすがにたまに吹く風は冷気を帯び、身にしみるような風でした。
冬に備え第2ケルンのトイレや登山口の売店はすでに閉鎖してました。
利用者も少なくなってきたため、植物保護用のロープも撤去されています。
もう完全に夏山とは別世界なので、登山される方は万全の防寒対策で入山して下さいね。


(観光客目線で写した白馬三山)
紅葉はほとんど終わりでしたが、代わりに八方池に映る白馬三山の撮影をする観光客の姿が目立ちました。


(右から五竜岳と鹿島槍)
こちらの山頂部も雪化粧です。


(太陽の環)
尾根を下山中にめずらしい光景を見ました。
水平環、環水平アークとか色々名前がついているようですが、この現象は上空にある雲が氷の結晶から出来て、さらに結晶の方向がそろった時になるそうです。

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2007年09月20日さまざまな樹木達

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

 登山道の巡視やモニタリングなどで山に行くと、高山植物以外にも高所ならではの木々に出会う機会が多くあります。樹木たちも人間と同じくそれぞれに個性があり、同じ個体でも気候や標高によりその場の環境に適合した形に変移します。高山帯の樹木は高山植物系の花たちに比べ華やかさは劣ってしまいますが、樹木の生長課程を観察することによって興味深い発見をしたりダイナミックな形状を鑑賞して楽しむ魅力があります。
今回はそんな高所の樹木の中で特に風変わりな樹木達を紹介したいと思います。


(根性の木)
蓮華温泉から笹目尾根の途中にあった蛇のような木です。
木の種類は不明ですが、冬季の雪の重みと倒木による影響かと思われます。
真っ直ぐ伸びたくても厚く積もった雪に邪魔をされ、軌道修正をしたあげくに倒木に行く手を遮られなんとも壮絶な人生を送っていますが立派に成長し続けています。


(異種格闘木)
この木の近くを歩いていたら、ギシギシと木の擦れあう音が聞こえ上を見上げると、シラビソとダケカンバがお互いにもたれ合っていました。
第一印象「喧嘩」。根元を見るとどちらも何らかの影響で地面が隆起してしまい、今のようなぶつかり合う形になってしまったようです。
この2本の木、見方を変えると喧嘩ではなく、仲良しで寄り添っていたのかもしれませんね。


(百枝一本傘妖怪の木)
中心に太い幹を持ち、上から傘を被ってるように見える木。たぶんコメツガの木だと思いますが、これも見事に上から雪の重みで押さえつけられ、上への成長を妨げられています。日の光を得るため、雪質の柔らかい所を探しつつ枝が伸びたようです。結果まるでタコのような形態になってしまいましたね。
でも力強さは感じられます。



(とろろ昆布の木)
この緑色に垂れ下がった物はサルオガセと言う糸状の地衣類の植物です。
あまり平地では見られない光景なので、この姿を見ると山奥に来た実感がわいてきます。このサルオガセ、なんと漢方薬として利用されているとの話ですが効果は不明です。見た目ちょっと不気味ですが、実際森の中で見ると幻想的で自然の神秘さを実感できます。

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2007年08月16日ハイシーズン突入の八方尾根

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

今回は登山者カウンターのデータ回収のため巡視も兼ねて八方尾根に行ってきました。天候は良好、夏休みと言うこともあり、もの凄い数の登山客・観光客が尾根を歩いてました。
尾根を巻いていく木道のルートと尾根を直登するルートの2本がありますが、どちらも満員御礼、大行列です。
最近は利用者のマナーが向上したのでしょうか、大勢の人がいると必ずマナー違反をする人を目にしますが、今回見た感じではロープで保護されている区域に入るような事はなく、またゴミなどもきちんと持ち帰っているようでした。


リフトから見た八方尾根


左から不帰嶮(かえらずのけん)・天狗ノ頭、左中央に八方池です。
雲はありますが、迫力満点です。


植生復元地帯は前回見たときよりも緑が多くなったような気がします。


尾根を直登するコースにて下山時に植生保護用のロープを使って下山している人を見かけましたが、これは登山用の補助ロープでは無いので、掴まらないようお願いいたします。
※体重をかけることによりロープを支える木杭が抜け、思わぬ事故を招きます。

巡視中、私の前を行く小学生の子供がなにやら絶滅種について友達と話しているようでした。
歩きながら耳を傾けていると、なんとその小学生の口から「絶滅危惧種」とか「RDB」と言う言葉が出てきました。ビックリです。
最近の学校での授業では絶滅種に関して取り扱われているのでしょうか?
少なくとも私が小学生の頃にはそんなこと教わって無かったと思います。
いずれにしても、子供達がこのようなことに興味を持ってくれると言うことは非常に心強く思います。

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2007年08月01日根子岳巡視

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

 ようやく梅雨も明け夏山シーズン到来の時期になり、菅平高原の利用者もどんどん増えてきました。
今回の巡視は峰の原登山口から根子岳頂上に向かったのですが、久しぶりの青空で頂上からの展望は良好で、四阿山はもちろんのこと草津白根山や浅間山など360°の大展望を得られました。しかし晴れていると言うこともあり気温はかなり高めで、吹く風も弱く汗だくになりながらの巡視となりました。

 菅平から根子岳へ直登するルートは2本ありますが、峰の原登山口から登るコースは傾斜が緩く、登山道もよく整備され、コース中腹にはきちんと避難小屋があり登りやすいコースですが、避難小屋より上部のルートは日陰となる場所がほとんど無いので、夏場の天気の良い日は熱中症対策が必須です。
逆に雷の時も同じく避難場所が無いので、前もって天気予報などで情報収集することが重要になってきます。


根子岳頂上にてくつろぐ登山者。手前にある鐘は鳴らすとかなり大きく響き渡るので、たぶん登山口まで聞こえるのではないでしょうか。
緊急連絡にも使えそうです。
※試しに思いっきり鳴らしてみたら下山するまで耳鳴りが治まりませんでした。


四阿山から縦走してきた登山者。
根子岳から四阿山に向かう人より、四阿山から根子岳に縦走する人が多いようです。


小さな子供もしばしの間、美しい自然の景色を凝視していました。
美しい物を見る目は大人も子供も同じです。

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2007年07月13日つゆぞらの栂池

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

まだまだ続く梅雨の中、今年2回目となる栂池自然園のモニタリング調査を行いに行ってきました。
前回調査日から約1ヶ月経過しましたが全体に新緑が増し、つぼみだった花たちも徐々に咲いてきてました。白い部分の仏炎苞(ぶつえんほう)をつけたミズバショウは残念ながらもうほとんど見られませんが、代わりにコバイケイソウ・イワカガミ・キヌガサソウなど、時期に応じた植物が咲き始めています。





前回と同じ撮影場所の「つがのもり」内のミズバショウです。
みごとに木道をふさいでます。でも通行は可能です。
葉は1mぐらいはありますが、例年から見てこれぐらいがマックスのようです。



ミズバショウオンリー。圧巻です



現在、栂池自然園の「水ばしょう湿原」内にてバリアフリー工事が行われています。
工事は繁忙期を避け、既存の木道を利用できるように1カ所ずつ施行する形で行われます。
これで段差につまずいて転ぶことは少なくなりそうですね。

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2007年06月29日八方尾根巡視

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

 八方尾根とは唐松岳から東へ延びる尾根で、リフトを乗り継げば第一ケルンまで行くことが出来ます。八方池まではトレッキングコースとして道も整備され、高山植物や北アルプスの展望を楽しめます。
 今回は八方池山荘から丸山ケルン(標高約2430m)の間を巡視してきました。あいにくの視界不良と池にはまだ残雪があるため、八方池に映る白馬三山の姿は見られませんでした。
雪渓は上の樺を過ぎた辺りから所々始まり、扇雪渓へと続いており、登山ルートは雪渓上にペイントされた赤い目印を頼りに歩くことになります。
目立った崩壊箇所、危険箇所は今回の巡視ルート上見あたりませんでしたが、路肩注意の標識がある所はそれなりに崩壊が進行しているので、今後も注意が必要です。



(上ノ樺付近から見た下の樺)

ここの植生は珍しい逆転現象(気候的遠因に加え超塩基性の蛇紋岩の存在が要因)により、通常は現れないはずの低い場所に
高山植物が分布していたり、逆に標高2130m付近より(下ノ樺)上になると標高が高くなるにもかかわらずダケカンバが現れます。
そして2350m付近(上ノ樺)から森林限界になり、その先からは高山性の植物があらわれます。
このように八方尾根は、植物相から見て非常に特徴的で貴重な地域であると言えますね。


まだ雪が残る八方池



生分解性植生マットによる植生復元
(成長速度に合わせて糸が分解し、時間の経過とともに織物組織(布目)が変化する植生復元マット「種なし」)

去年に工事を行った物ですが、あちこちから新芽が出ていました。
脆弱な土地で種子が育っていくことは大変ですが、復元がうまく行くことを願いたいですね。

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2007年06月21日栂池もようやく花の季節

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

栂池自然園の花の時期は6月から9月中旬頃までで、日本の高山植物の約8割の植物を見ることが出来ます。
今回の目的は、毎年定期的に行っている植生及び地形変移状況のモニタリング調査を行いに行ってきました。
ここへは何回か訪れているのですが、未だに好天に恵まれたことがありません。今回もドンヨリとした天候でしたが、咲き始めたミズバショウ達が気持ちを晴れやかにしてくれました。




ゴンドラを降りたところにある「つがのもり」内のミズバショウです。
7月には、葉っぱは1mぐらいに達し木道をふさぐぐらい大きく成長します。
ここを通るには藪こぎではなく、ミズバショウこぎになってしまいますね。





標高約1860mのミズバショウ湿原。この辺りのミズバショウは7月上旬ぐらいまで咲いてます。大きさは「つがのもり」と比べて約半分ぐらい小さいです。





ミズバショウと同じサトイモ科のザゼンソウ。
ついつい拝みたくなります。

※風穴から先の湿原はまだ所々に残雪があります。雪によって滑りやすい所が ありますので気をつけて通行してください。
 それと周りの景色に見とれて、木道の段差で転ばぬようきちんと足元も見て 散策してくださいね。

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2007年06月01日白馬岳貞逸祭&大雪渓トレッキング

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

今年で41回目を迎える白馬岳貞逸祭&大雪渓トレッキングに出席してきました。天候はまずまずの天気でしたが、黄砂の影響で少し青空が濁っていました。参加者は一般・関係者含め約200名で、神事・テープカットの後にトレッキングが開催されました。砂防工事専用道路終点までは特にコース上問題は無く、積雪もありませんでした。


(安全祈願)

(白馬沢の雪渓)

コースは猿倉山荘から白馬尻小屋までで、大雪渓の入り口を見て引き返すと言う内容で、参加者は快適なトレッキングを楽しんでいました。


白馬尻小屋の除雪作業(毎年冬は小屋を解体して、夏の営業に向けてまた建てます)
※村営白馬尻荘は今年から休業となります。


(猿倉荘前にてトレッキング出発前の楽しみに待つ参加者達)

猿倉荘付近では時折、もの凄い突風が吹いてましたが、山麓に住んでる関係者の方が口々に「今年の天気は何かおかしい、年々気候が変わってるようだ」と話していました。市街地に住む者にとっては、なかなか気候の変動を察する機会はあまり無いですが山麓の人たちは敏感に反応してるようです。
最近、環境破壊や地球温暖化に対する関心が深まっています。特効薬的な改善方法ではありませんが自然と接する事により、今おかれてる地球全体の深刻な状況が見えてくると思います。
現状を知ることによりきっと何かを思うことでしょう。
あとはその思ったことに対しどう行動していくかがこれからの課題でしょうね。

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2007年05月04日室堂巡視(AR東原版)

長野 アクティブレンジャー 東原 桂一

AR木村さんに続き私もGW中に室堂の巡視を行ってきました。
この巡視目的はゴールデンウィーク期間中における室堂・地獄谷への立入禁止看板、ポール、ロープの点検及び問題行為の確認・注意・記録等を行い延べ10日間に渡り交代でパトロールを実施いたしました。
私が担当した初日はあいにくの天候で視界が全く利かない状態でした。
そのせいもあり観光客や登山者・スキー客の姿はほとんどありませんでした。
あれ?前回の安全祈願祭もこんな天気でしたね…。
しかしこんな天候でも巡視は実施されます。暴風雪の中を歩く観光客も少なからず見られました。
巡視している私でさえも方向感覚が狂いそうな状況で、スキー客や観光客は大変そうに歩いてるのを見てとても心配になったので自信のなさそうな人にはあまり無理をせずに戻るよう声をかけたりしました。
山の上の悪天候は下界では想像もつかないほどの悪条件です。
いくら観光地とは言えそこは森林限界を超えた高山帯なので安易な気持ちでの行動は禁物です。
室堂の場合は各ターミナル内においてライブカメラが設置されていますので、モニターで天候を確認して行動をしてもらえたらなと思います。




左の写真はホテル立山(室堂バスターミナル)前の全景。暴風雪気温+2度。
悪天候のため人数はかなり少なめ。観光客はほとんどこのあたりの散策でしたが、何組かはみくりが池温泉まで歩いて引き返してる人がいました。
右は2日目の朝同じ場所で撮った写真。雲一つ無い快晴で日差しが暑く感じられました。




地獄谷見晴台付近です。強風により保護柵が倒れていたので直しました。
今回この付近では風にあおられ地獄谷からの硫化水素ガスの濃度が濃く感じられました。
※臭いがきつく息苦しく感じてきた場合はその場からすぐに離れるようにしてください。




巡視初日の日にリンドウ池のハイマツ付近でライチョウを目撃しました。
ライチョウはイヌワシなどの天敵から避けるため朝夕の時間、天候の悪い日に活動します。
雷鳥を観察したい人は天気が悪いときの方が良いかもしれません。
出現する確率が高くなりますよ。しかしそこはきちんとした装備をした上での話です。そしてあまりにも天候不良な場合は無理をしないようお願いいたします。


この室堂は雷鳥に対する保護と繁殖に力を入れております。
そのため雷鳥保護の為のロープが敷設されています。
私が巡視した日は悪天候の上、風もかなり強かったので立入禁止看板が倒れてたり、向いてる方向が変わってしまったりしてる物がたくさんありました。
看板を修正する際にロープを越えた人の足跡の確認をしましたが、幸いなことにこの日は見あたりませんでした。
翌日は朝から快晴に恵まれ、室堂には早朝から沢山の観光客やスキー客などが来られました。
この日の巡視中にロープを越えて雪の上で大の字で寝そべっている観光客を発見しました。すぐに出てもらうようお願いしました。観光客は残念そうな顔をしながらも素直に応じてくれました。私はどうしてもその観光客の残念そうな顔が気になり、何故立ち入り禁止の場所に入ったのか聞いてみました。
するとその方は自分が住んでる所には雪が無く、とても綺麗だったので
人の足で踏み固められた雪の上より自然に積もった雪の上で自分の人型の写真を撮りたかったと言う答えが返ってきました。確かになるほどなと思います。
気持ちはとてもわかるのですが、一人がこういう行動をとってしまうと必ず後から同じ事をする人が出てきます。そうならないためにも初期指導という行為が重要になってきます。
この事を観光客に話すととても理解してくれたようで安心いたしました。
室堂へ来られた方達皆の顔はとても生き生きとして感動や喜びを表現している人ばかりです。そんな人たちをちょっとしたルール違反に対して注意をするのはとても辛い事です。ですから利用者達には自然保護の理解と管理する側の気持ちも理解していただければ嬉しい限りです。

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