中部地方のアイコン

中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その3(弥陀ヶ原~室堂)

2022年02月02日
立山 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝&平松です。

今回は第3回目、弥陀ヶ原から室堂までを歩きます。

<↑今回の歩いた区間。弥陀ヶ原 標高1930m、室堂 標高2450m 出典:電子地理院地図を加工。>

○過去の投稿はこちら

第1回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その1 立山駅から美女

第2回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その2 美女平から弥陀ヶ原

スタート地点の弥陀ヶ原は大日平とともにラムサール条約に登録されています。この条約は、湿地の生態系を保全するために制定されており、弥陀ヶ原・大日平は国内で最も標高の高い登録地です。

<弥陀ヶ原>

<湿原を踏み荒らさないよう木道が整備されています>

2月2日はラムサール条約が採択された日です(1971年2月2日)。また、世界中の人々に湿地への関心を持ってもらい、その大切さを知ってもらうために1996年に「世界湿地の日」としてラムサール条約事務局が定めました。

<2月2日 世界湿地の日 作成:環境省自然環境局野生生物課>

弥陀ヶ原は溶岩台地の上にできた湿原や草原で、そこには貴重な動植物が多く見られます。ここには遊歩道が整備されていて、内回りコースは40分(1.2km)、外回りコースは1時間20分(2.2km)程度で散策することができます。時期によってはボランティアガイドによる自然解説も行われています。

<イワイチョウ 高山の湿地や雪田の跡に多く生育しています>

<タテヤマリンドウ これも湿った環境で多く見られます>

<ミヤマモンキチョウ 国内では北アルプスと浅間山周辺だけで見られます>

また、弥陀ヶ原バス停から少し上がった場所には第28番観音石仏あります。

<第28番札所丹後国成相寺 聖観音立像>

元はもう少し標高の高い「姥石」付近にあったとされています。「歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その1 立山駅から美女平」で若い女の子が神の怒りに触れ美女杉に変えられたと書きましたが、その続きのお話があります。『止宇呂(とうろ)』ともう一人の女の子の2人は、なおも立山登拝をめざし進みますが、もう一人の女の子も途中でカムロ杉にされてしまいました。残る一人となった止宇呂はそれでも進み、国見山付近まできたとき、とうとう姥石に変えられてしまいます。石に変えられる瞬間、持っていた手鏡だけでも頂上に、、、と最後の力を出して、山頂めがけて投げましたが、途中でおちてしまい、その鏡も石へと変えられました。その石(岩)のことを鏡石といいます。鏡石の近くには第29番観音石仏が立っています。

<鏡石>

<第29番札所丹後国松尾寺 馬頭観音坐像>

弥陀ヶ原を後に歩みを進め、沢を越えると一ノ谷・獅子ヶ鼻岩に着きます。

昔は、立山登山で一番の難所と言われたのが一ノ谷の鎖場です。(今も難所であることに変わりはありません。)

すぐ上には「獅子ケ鼻」と呼ばれる断崖があります。

<一ノ谷の鎖場>

<一ノ谷の鎖場。慎重に登っていきます。>

かつてこの岩場で弘法大師が修行を行ったという伝説もあり、その他多くの修験者がここで修行を行っていました。人ひとりだけが入れる人工窟が点在しています。ここに、第27番札所(如意輪観音)がありましたが、現存は笠のみとなっています。

<窟内の弘法大師像や不動明王像、地蔵菩薩像がある>

獅子ヶ鼻岩の前後にも湿地があり、ワタスゲ原が広がっています。

<ワタスゲの多い湿地>

<イワショウブ 湿った場所を好む植物です>

<カオジロトンボ 山地湿原で見られるトンボです>

<コヒョウモン 草地を好み弥陀ヶ原周辺でよく見られます>

天狗平に着きました。ここからは湿地はほぼなくなりますが、チングルマやアオノツガザクラなど、雪が残る場所に多く見られる植物が目を楽しませてくれます。

<チングルマの咲く木道>

<アオノツガザクラもチングルマも小さいですが草ではなく木です>

<テガタチドリ 湿り気の多い草原で見られます>

また、天狗平には第30番観音石仏があります。

<第30番札所近江国宝厳寺 千手観音立像>

正面の小さく見える建物が室堂ターミナルです。

<遠望の左側台形に見えるのが立山。右側は浄土山。>

天狗平~室堂平は剱岳がきれいに見える眺望エリアでもあります。(室堂まで行くと剱岳が隠れていってしまいます。)天気が良ければ、大パノラマを望みながら進むことができます。室堂まではあと少しです。

<天狗平~室堂平アルペンルート沿い(車道)から。2021.9.30撮影>

今回のルートは弥陀ヶ原~天狗平間が約4.9kmで標高差は320m、天狗平~室堂が約1.6kmで標高差は150mです。特に天狗平から室堂までの間は比較的平らな道が多く、軽く散策するにもちょうどいい距離です。室堂まで来られた方は足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

※この区間は標高も高く残雪が残りやすい場所のため、事前の情報収集や装備に注意してください。

****************************************

中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。