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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

志賀高原ユネスコエコパーク

2020年06月24日
志賀高原 則武敏史

こんにちは、上信越高原国立公園の志賀高原です。

志賀高原は国立公園であるとともに、「志賀高原ユネスコエコパーク」にも登録されています。

1980(昭和55)年に他の3地域とともに日本で初めて登録され、2014(平成26年)年に区域が拡張されています。

では、「ユネスコエコパーク」とはどんなものでしょうか。

「ユネスコエコパーク」は「ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)」の提唱する「生物圏保存地域(Biosphere Reserves)」の日本独自の呼び名です。

また、山ノ内町の子ども向けのページ<http://yamanouchi-kids.com/learn/about/>では

・自然と人が仲良くくらす場所

・自然を守りながら賢く活用し、人と自然が共生できる形を探すのが、ユネスコエコパークの目的

と説明されています。

例えば、6月16日のAR日記「水のつながり」で、「イワナ」が生息している志賀高原一の瀬地区の小雑魚川(こざこがわ)では、川の上流に宿泊施設やスキー場がある地区にも関わらず、地区住民の努力によりイワナの生息環境が保たれていることを紹介しました。自然環境の保全と地域の人々の生活が両立している状況なので、ユネスコエコパークの目的に合っていると考えられます。

なお、生物多様性の保全という観点は国立公園にもあるものです。

さて、「志賀高原ユネスコエコパーク」の区域と「上信越高原国立公園」の区域は下図のように重複しています。

志賀高原ユネスコエコパークの関係市町村は、長野県山ノ内町、高山村、群馬県中之条町、草津町、嬬恋村です。

志賀高原ユネスコエコパークの区域

ユネスコエコパークは役割の異なる「核心地域」、「緩衝地域」、「移行地域」の3つの区域にゾーニングされます。

志賀高原ユネスコエコパークでは「核心地域」と「緩衝地域」は国立公園内に、「移行地域」は国立公園外に設定されています。

高山村は全村が志賀高原ユネスコエコパークの区域に含まれます。

■核心地域

上信越高原国立公園(志賀高原地域)の特別保護地区(ただし、平成31年1月の公園計画変更前の特別保護地区)と同じ区域。自然公園法による保護規制の強い区域。

・山ノ内町志賀高原の志賀山を中心とした大沼池や四十八池を含む約700ha。

■緩衝地域

核心地域を囲む約17,600ha。上信越高原国立公園の特別保護地区、特別地域及び普通地域にあたる区域。

・山ノ内町では国立公園に含まれる区域のうち岩菅山東斜面周辺を除く区域。

・高山村では国立公園に含まれる区域全域。

・中之条町、草津町及び嬬恋村はそれぞれ国立公園に含まれる区域の一部。

■移行地域

国立公園外の約12,000ha。

・山ノ内町及び高山村の国立公園に含まれない区域の全域。

例えば、志賀高原のトレッキングコースだと、「池めぐりコース」と「まが玉の丘コース」は核心地域を通るコースです。ほかの多くのトレッキングコースは緩衝地域にあります。

また、緩衝地域には、群馬県側では、草津白根山、芳ヶ平湿地、万座温泉といった場所が含まれます。国立公園内のスキー場や宿泊施設も緩衝地域にあります。

志賀高原で皆さんは、トレッキング、食、温泉、スキーなどそれぞれの楽しみ方をされると思います。楽しむ中で、国立公園であることとともに、自然環境と人の活動との共存を目指す「志賀高原ユネスコエコパーク」であることも意識していただければと思います。

本文は以上です。以下、ユネスコエコパークについて次の3項目を説明します。

1.ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)とは

2.ユネスコエコパークの「3つの役割」

3.ユネスコエコパークの「3つの区域」

1.ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)とは

-----以下、文部科学省<https://www.mext.go.jp/unesco/005/1341691.htm>から引用-----

ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は、生物多様性の保護を目的に、ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画(1971年に開始した、自然及び天然資源の持続可能な利用と保護に関する科学的研究を行う政府間共同事業)の一環として1976年に開始されました。

ユネスコエコパークは、豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域です。(認定地域数:124か国701地域。うち国内は10地域。)※2019年6月現在

世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然を厳格に保護することを主目的とするのに対し、ユネスコエコパークは自然保護と地域の人々の生活(人間の干渉を含む生態系の保全と経済社会活動)とが両立した持続的な発展を目指しています。

2.ユネスコエコパークの「3つの役割」

ユネスコエコパークは、自然環境と人の活動との共存について3つの役割を持っています。

-----以下、山ノ内町<http://yamanouchi-kids.com/learn/about/>から引用-----

■保存機能

人間の生活とその影響も含めて、生物多様性を守るために重要な地域であること

■学術的研究支援

持続可能な発展のための調査や研究、教育の場があること

■経済と社会の発展

自然環境と人間との共生のモデルとなること

3.ユネスコエコパークの「3つの区域」

「核心地域」、「緩衝地域」、「移行地域」の3つの区域は、上の3つの役割を果たすことができるように設定されたものです。

-----以下、山ノ内町<http://www.town.yamanouchi.nagano.jp/shiga_highland_biosphere_reserve.html>から引用-----

■核心地域

自然環境の世界全体の財産として厳格な保護を目的とした地域です。

この地域では自然環境のモニタリングや科学的なデータの収集などに利用されます。

国内の法律により保護されます。

(志賀高原ユネスコエコパークでは国立公園の特別保護地区と同一の範囲であり自然公園法などにより保護されています)

■緩衝地域

保護と活用の両立を目指す地域です。

この地域では、核心地域を保護する役割と、自然環境に負担がかからない範囲での活用ができます。

生物多様性に配慮した森林経営や、教育・観光などに利用されます。

(調査研究活動、森林復元、ESDなどの環境教育、エコツアーなどの観光・レジャーでの利用)

■移行地域

地域住民の生活の場、地域発展のための様々な社会・経済活動の場です。

自然と共存した経済活動を通じて、新たな環境対策、伝統文化の保護継承、コミュニティの振興などを行います。

【新型コロナウイルス感染拡大防止についてのお願い】

上信越高原国立公園の利用においては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いや3つの密を避けるといった「新しい生活様式」の実践をお願いします(厚生労働省「新しい生活様式の実践例」)。また、上信越高原国立公園へお出かけの際には、上信越高原国立公園のページ、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認ください。皆様のご協力をお願いします。