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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

白山国立公園事件簿 泥まみれ踏みにじり事件

2020年06月13日
白山国立公園 大石佳織

こんにちは。

白山自然保護官事務所の大石です。


今日は緊急事態宣言が発令されている最中に白山国立公園で起こった事件についてお伝えします。

事件現場は『根倉谷園地』。
石川県白山市、重要伝統的建造物群保存地区などがある白峰地区から県道白山公園線を20分ほど走ったところにあります。

この園地は例年4月下旬頃にミズバショウが見ごろを迎えますが、今年は新型コロナウィルス感染拡大防止のために4月下旬から園地を閉鎖していました。
(※6/12現在、閉鎖は解除されています。)

事件が発覚したのは、5月4日に緊急事態宣言の延長が発表されたことを受けて、園地閉鎖の期間を変更する案内パウチを貼りに行った5月7日のことです。

(5月7日の根倉谷園地)

事件現場を目撃してしまったのです。

根倉谷園地は手ごろな木や柵がないため、園地閉鎖を案内するパウチの一部は木道の路面に貼り付けていました。
これを交換しようと出かけたのですが、私が到着したとき、遠目から見てもパウチは汚れていました。

なんと、誰かが泥まみれの足でパウチを踏みにじっていたのです!!

(踏みにじられたパウチ)
遠目に発見したとき、ちょっと悲しい気持ちになりました。

しかし...
よぉ~く見ると、この足跡、何かがおかしい。

周りをよく観察すると、木道の上にうっすら足跡が続いています。
探偵になった気持ちで不明瞭な足跡を追っていくと...
あった!
犯人の手がかりになりそうな割とはっきりとついた足跡です!

(割とはっきりついた足跡。矢印の箇所。わかるでしょうか...?)
んんん??
蹄(ひづめ)が2つある!

なんと外出自粛が呼びかけられていたゴールデンウィークに、ミズバショウが咲く根倉谷園地の木道を利用していたのは動物だったのです。
大きな蹄の後ろに小さな蹄(副蹄)の痕が残っている場所もあったので、足跡の主はイノシシのようでした。
ミズバショウが咲く湿地内を掘り起こしてお食事をした後、木道を利用してお帰りになったようです。

ということで、パウチを泥まみれの足で踏んで行った犯人はイノシシでした。
外出自粛期間中も、動物たちはいつも通り生活していたんですね。

こんな風に、根倉谷園地ではイノシシの痕跡をよく見かけます。ツキノワグマの痕跡を観察できることもあり、動物の暮らしを感じられます。

しかし、鉢合わせは避けたいところ。
散策する際は、鈴を鳴らすなど動物たちに先に気付いてもらう工夫をお忘れなく!

(通勤中に車中から撮影したツキノワグマ。白山にはたくさんの動物が生息しています。)