ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2020年6月16日

3件の記事があります。

2020年06月16日ライチョウの巣探し

中部山岳国立公園 関根陽太

中部山岳国立公園管理事務所の関根です。

   

中央アルプス駒ケ岳周辺や乗鞍岳では、ライチョウの巣探しが進んでいます。

    

ライチョウの巣を見たことがある方は少ないのではないでしょうか。

それもそのはず。ライチョウは主にハイマツの下に巣を作るので、登山道を歩いているだけではライチョウの巣はほとんど見えません。

     

(ライチョウの巣)

   

中央アルプスの無精卵と動物園で飼育されている個体が産んだ有精卵の入れ替えや、乗鞍岳でのケージ保護などを行うにも巣を探す必要があります。

巣を探すために、広大なハイマツ林をむやみに歩き回る訳にもいきません。

そこで、親ライチョウをよく観察し巣のありかを特定しています。

   

まず、雪どけから産卵までのライチョウの行動を紹介します。

 ・高山帯で餌が得られない冬には森林限界付近まで移動して過ごしていたライチョウが

  雪どけと共に再び高山帯に集まってくる

 ・オス同士のなわばり争いが激しくなる

 ・雪どけの早い場所からなわばりが決まってくる

 ・5月に入ると多くのなわばりにメスが現れ一夫一妻のカップルが成立

 ・5月末から6月上旬にメスは卵を産み始める

 ・6卵程度の卵を産み終える6月中旬にメスは抱卵を始める

 ・抱卵はメスが1羽で行うため、メスはなかなか巣を離れることができない。

 ・抱卵中のメスは1日数回採餌や排泄のために巣を離れる。

   

巣を探すには、抱卵中のメスが巣を離れるのをじっと待ち、メスを見つけたら行動をじっと観察し、巣に戻るのを待ちます。

(巣探し調査の様子) 

  

巣探しは写真のようになわばりが見渡せる場所でじっと待ち、いつ巣を離れるかわからないメスが現れるのをじっと待ちます。

写真でフィールドが広大なのが伝わりますでしょうか?この時期は日差しが強かったり、吹雪になったりと高山帯は厳しい環境です。

さらにメスは明け方や夕方遅くに巣を離れることが多いのですが、メスが卵を抱く時期は夏至が近いこともあり朝は4時前から、夜は18時を過ぎるまで調査を行うこともあります。

ライチョウの巣探しは忍耐のいる厳しい調査なのです。

  

季節の進み具合やライチョウの行動のタイミングを読みながら、同事業を進めています。

  

皆さんがライチョウの巣を見たことがない理由がおわかりいただけましたでしょうか。

  

現地の情報も随時アクティブ・レンジャー日記にUPさせていただければと思います。

  

詳しい資料は、信越自然環境事務所HP内トピックスライチョウ保護増殖事業等についてに掲載しています。

また、癒しのライチョウフォトアルバムもぜひどうぞ!

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 中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、引き続き慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

 なお、この投稿は「おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト」に基づいて実施しています。

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2020年06月16日日本一の大瀑布「称名滝」は生きている。

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

前回は、弥陀ヶ原・大日平について紹介をさせていただきました。今回は、その間に流れ、日本一の落差を誇る「称名滝」について触れていきます。

「称名滝」は国の名勝および天然記念物になっており、日本の滝百選にも選ばれています。

称名滝の上部に広がるのが弥陀ヶ原と大日平です。

<アルペンルート大観台より見た称名滝>

日本一の滝の落差は350m。東京タワー333mがすっぽり入ってしまう高さです。

間近で見上げる滝は大迫力です!

<展望台から称名滝(左)、ハンノキ滝(右)を見上げる>

滝は4段になっており、上から70m、58m、96m、126mと順に落ちています。

また今の時期、融雪期や降雨時に出現するのが、称名滝右手に落ちる「ハンノキ滝」です。

<中央に落ちているのがハンノキ滝>

その落差はなんと、500mあるそうです!圧巻ですねえ。

称名滝の下流部を見上げると、通称「悪城の壁」と呼ばれる岩壁がそびえ立っています。その高さは500mあり、一枚岩となっています。

<称名川の左岸側の壁面が悪城の壁と呼ばれる>

この巨大な断壁を作り出した当人が称名滝です。称名滝は、約7万年前には現在の立山駅付近(約7km手前)にあり、水の流れの浸食により徐々に削られて後退して現在の位置に移動しました。もちろん現在も浸食はされ続けており、現在進行形です!

水の力のすごさと、スケールの大きさを感じることができる場所です。

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国立公園にかかる公共交通機関につきましては現在、以下のようになっております。

日々情報が変わりますので、お出かけを予定される際は各HPをご確認ください。

■立山黒部アルペンルート

6月19日まで営業休止期間が再延長となりました。

上記に伴い、アルペンルート沿いの各施設につきましても営業休止期間を延長しております。

【立山駅から】立山黒部アルペンルート

【扇沢から】関西電力黒部ダム

■黒部峡谷鉄道トロッコ電車

6月1日より営業開始しました。

黒部峡谷鉄道トロッコ鉄道

新型コロナウイルス対策のため、便数を削減、お客様同士の間隔を空けるなどしながら運行するそうです。ご理解とご協力をお願いいたします。

上記に伴い、欅平ビジターセンターが開館しました。

6月1日より

開館時間 10:00から15:00

減便により開館時間が通常より短くなっております。

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 中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、引き続き慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

 なお、この投稿は「おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト」に基づいて実施しています。

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2020年06月16日志賀高原から水のつながり

上信越高原国立公園 志賀高原 則武敏史

こんにちは、上信越高原国立公園の志賀高原です。

志賀高原管理官事務所のある長野県も梅雨入りしました。

雨水や雪解け水は、「水」という形でいろいろな物事とつながっています。

■「イワナ」-水中の生物-

志賀高原のイワナはすべて天然です。

写真のイワナは、一の瀬地区のスキー場を流れる小雑魚川(こざこがわ)で撮影しました。上流には宿泊施設があり、水路の底面と両側面がコンクリートです。このような場所でもイワナがいるのは、地区の方が排水などの環境保全に対して高い意識を持っておられるためです。

写真を撮影した場所は禁漁区になっています。そのためかどうか分かりませんが、イワナは物陰に逃げることが少なく、また、逃げてもしばらく待っていると出てきます。

小雑魚川は雑魚川(ざこがわ)へと名前を変え、魚野川(うおのがわ)と合流し中津川(なかつがわ)となり、信濃川に合流します。

小雑魚川のイワナ

<6月9日撮影。この50mくらい下流でも1匹いました。雑魚川と魚野川での渓流釣りは志賀高原漁協の定める規則に従ってください。>

「大沼池(おおぬま いけ)」-水のある景観、また、灌漑用水、発電用水へのつながり-

志賀高原ではトレッキングコースや登山道沿いに20を超える池があります。

大沼池は志賀高原で面積が最も広い池です。このAR日記でも何度となく紹介しています。

大沼池は、また、志賀高原の麓の中野市の農業用水「八ヶ郷(はっかごう)用水」の水源となっています。大沼池の水は横湯(よこゆ)川を流れ、志賀高原からの角間(かくま)川と合流し夜間瀬(よませ)川となり、八ヶ郷用水に取水されます。稲作のほかに、りんご・もも・ぶどうといった果樹の栽培に利用されています。

また、横湯川から取水され発電にも利用されています。

赤石山山頂から大沼池を望む

<赤石山山頂から。中央の志賀山の溶岩で堰き止められてできた池。青色の水面が印象的です。写真の右奥が中野市方面。平成28年8月8日撮影。>

大沼池の石碑

<大沼池の堤にある八ヶ郷用水関係の石碑。平成29年8月4日撮影。>

■「田ノ原湿原(たのはら しつげん)」-過湿な環境に特有な植物の生育、また、自然草原としての景観-

志賀高原では、湿原はトレッキングコースや登山道沿いにいくつもあります。

田ノ原湿原は国道292号沿いにあり、近くに駐車スペースがあるのでアクセスしやすく、比較的広い面積があるので取り上げました。

今が見頃の主な植物は、ワタスゲの穂やヒメシャクナゲの花で、7月中旬にはニッコウキスゲが咲きます。

田ノ原湿原は「高層(こうそう)湿原」と呼ばれるタイプのもので、湿原の水分は雨水と雪解け水で維持されています。

田ノ原湿原

<奥に見える特徴的な形の山は笠ヶ岳(かさがたけ)。左:平成27年7月21日撮影、右:令和2年3月13日撮影。>

田ノ原湿原のワタスゲ群生

<湿原植物の一つワタスゲの群生、今が見頃です。撮影している時に「ここはどこなんだ?」という利用者の声が聞こえてきました。6月15日撮影。>

■本事務所で使っている水

前回の記事「志賀高原の名水」で紹介した清水公園の近くの湧き水を地区共同の簡易水道で引いているものです。湧き水も雨水と雪解け水があってのものです。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、政府や各自治体からは、感染リスクを高めないような行動がお願いされています。上信越高原国立公園へお出かけの際にも、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。

本事務所が属する環境省信越自然環境事務所では「#STAYHOME おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト」を実施しており、外出しなくても国立公園を楽しんでいただくための情報発信を行っています。

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