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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

夏の主役

2011年07月28日
名古屋
 この時期、干潟沿いを歩いているとマメ粒よりもはるか小さな数ミリの砂団子が目に飛び込んできます。 
 この砂団子が無数にあれば、周辺にカニが住んでいるということ。今日は、藤前干潟の夏の主役であるカニを紹介していきたいと思います。

   
*無数の砂団子がれば、周辺にカニが生息している。

 渡り鳥が北に飛び立ってしまったこの時期の藤前干潟は、青い空ばかりが目につきます。
 一見主役を失ったような藤前干潟で、元気な姿を見せているのが、干潟に生息する底生生物の蟹たちです。
 真水と海水が混ざった汽水域である藤前干潟は、潮の時間で塩分や水量の環境が変化するため、魚だけではないさまざまな生き物の住み処となっています。
 中でも甲殻類のカニは、砂粒の大きさによって住むカニも違ってくるため、引率の大人が夢中になってしまうということもしばしばおきています。

   
*干潟周辺にあるスロープの隙間は底生生物の宝庫。フジツボにクロベンケイガニが見える。

 まず砂干潟に入り口、砂の多い場所で人気者となっているのがチゴガニ。チゴ(稚児)という名前から想像できるように、甲羅の幅は10ミリというミニサイズ。しかもその見た目のかわいさだけでなく、パフォーマンスを披露してくれるため、訪れる人のハートを釘付けしてしまうようです。
 実はこのパフォーマンスは、両方のハサミを上下に振るもので、オスのみが行うため、求愛のダンスとも言われています。が、チゴガニは、春が繁殖期といわれていますが、繁殖期以外の夏にもこのハサミを振るため、はっきりとした理由がわからないのが本当のところです。求愛のダンスなら素敵なのですけどね。

   

   
*これが、チゴガニのパフォーマンス。
 
 そしてこのチゴガニと同じ場所を好み、同じぐらいの甲羅の大きさを持ちながら、背面が灰色から褐色という干潟の保護色なため、ちょっと目立たない存在になっているのが、コメツキガニ。
が、よくみると、昼間に潮が引くと巣穴から砂をかきだしながら現れ、小さいながらの生き物の強さを見せてくれます。
 このコメツキガニも、チゴガニ同様、オスが背伸びをして、ハサミを振り上げるパフォーマンスをします。この動作は、春から夏にかけて行われるため、こちらは求愛行動と見られています。

   
*チゴガニとコメツキガニ(右)の2ショット。同じ環境を好むため一緒に見られる。

 さて干潟をさらに進み、干潟が柔らかい泥になったあたりで見られるのが、ヤマトオサガニ。この日本男子らしい名前のせいもあるのか、このカニの四角い甲羅を見て思い出してしまったのは、亡くなった国民的俳優の顔。それ以降、干潟で見る度に心の中で「寅さんガニ」と呼んでいます。

   
*穴から出るヤマトオサガニ。この四角い甲羅でぜひ国民的カニを目指してほしいもらいたいものだ。

 四角い顔でなかった、四角い甲羅とともに、眼が長いのもこのカニの特徴。繁殖期になると、このカニもハサミを振り上げるパフォーマンスを行うそうですが、残念なことに、まだそれを目にしたことがないのでした。
 小さな生き物が精一杯に生きている藤前干潟。一生懸命な姿を目にすれば、元気が出ること請け合いです。