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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

日本のいのち、つないでいこう!COP10まで1日前

2010年10月15日
妙高
《 秋の妙高いもり池 マユタテアカネ と オオアオイトトンボ 》

先日の朝自主的に続けてきた、いもり池周辺の清掃活動に出かけたときのこと。

例年より紅葉も遅れ気味の、暖かく明るい光に満ちた遊歩道を、
いつものようにゴミ袋とデジカメをぶら下げ、
ゴミバサミで吸い殻やペットボトルのキャップやらアイスクリームの紙なんかを
拾いながら歩いていくと…

脇道に入る木道の上に「赤とんぼ」を発見!
はいつくばってパチリ!

鼻のあたりが黒く、尾の先端が上に反っている「マユタテアカネ」です。

その直後、左目の隅をよこぎる昆虫の影…

そっと振り返ると、今度は枝にイトトンボ!
大きくて青緑色に輝くボディ、しかも羽根を広げて休憩中。
初めて見たその姿に、ちょっと興奮気味でまたパチリ!

「オオアオイトトンボ」です。

両方とも、林に囲まれた水草の多い池のまわりで、
9月から11月によく見られるトンボだそうです。

これまでトンボをじっくりみることがなかった私。
そこで、少し調べてみました。

トンボは、世界に5,500種類くらいいるそうです。

「マユタテアカネ」などの、前羽根と後羽根の形が違う「不均翅(ふきんし)亜目」、

「オオアオイトトンボ」などの、前羽根と後羽根の形がほぼ同じ「均翅(きんし)亜目」、

そして今から2億年くらい前の地層から、このなかまの化石が出ることで有名な
「ムカシトンボ亜目」(世界中で日本とヒマラヤにたった2種類)

の3種類に分類できるそうです。

日本では、2008年5月現在
この3つの亜目、214種類のトンボが確認されているとのこと。

今回であったトンボたちの特徴は…
●卵で越冬して春に幼虫になる。
●幼虫は水のなかでくらし、エラで水中の酸素をとりこんで呼吸。
●何回か脱皮をくりかえしてサナギにはならずに、
幼虫から羽化して成虫になる不完全変態(ふかんぜんへんたい)の昆虫。
●幼虫は水中のアカムシなんかを、
成虫は他の昆虫類やクモなんかを空中で捕食する肉食。
●羽化して成虫になると、水辺を離れて林や草原で生活。
●成熟するとまた水辺に移動し、自分で産卵場所を選ぶ。
●種類によって,好きな水辺が違う。

ということは…

「綺麗な水」、
「水辺だけでなく、林や草原もふくめた豊かな自然」、
「エサとなる他の昆虫などの豊富さと、それを支える環境」

が全てそろわなければ、トンボたちは生きていけないんです。

私が子どもだった30年前、
当時くらしていた埼玉のベッドタウンでも
秋になると空を埋め尽くすほどの
「赤とんぼ」を見ることができました。

最近は昆虫の数も減って、トンボを探すのも難しくなってきているように感じます。

たくさんのトンボ、いろんな種類のトンボが大空を飛び回れる環境は、
人間にとっても良い環境であることは間違いありません。



1日に100種以上のスピードで絶滅していっていると言われている「いのち」。
でも、一度絶えてしまった「いのち」は、二度と元にもどらない…

「生物多様性の危機」を引き起こしているのは、人間です。
が、「生物多様性の危機」をくいとめられる力を持つのも、人間です。

私も父親として、幼い我が子やその子どもたちが
「生物多様性からの恵み」を受け続けていけるように、

これからも身近な「生物多様性」を守っていけるような取り組みを、
できることから続けていこうと考えています。

ただ、ひとりができることにはどうしても限界があります。

だからこそ、
10月18日から名古屋で193の国と地域が集まって開催される
「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」で、
人類の知恵が結集され、
「生物多様性の危機」をくいとめる大きな力になることを
今から期待しているのです。

●全国のアクティブ・レンジャーが綴る「日本のいのち」
日本のいのち、つないでいこう!
/nature/mat/m_3_7.html

●環境省 生物多様性ホームページ
生物多様性-Biodiversity-
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/

●COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
生物多様性条約COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
http://www.cop10.go.jp/